紹介 小梅ちゃんの作者 林静一
林静一
小梅ちゃんの作者といってわからないなら、アジカンのジャケットで有名な中村佑介の元ネタといった方がいいだろうか。あの平面的で色白ながらも、目をひきつけてやまないイラスト。林静一という大ベテランはもっと知られてもいい作家だ。
今でこそイラストレーターだが、漫画も描いていた。漫画雑誌「ガロ」でつげ義春、鈴木翁二と並んで突出した才能を見せていた彼の画風は、中村佑介が示したように現代でも十分魅力的だ。
漫画作品 『赤色エレジー』
1970年の作である。貧乏漫画家である主人公と彼女との愛おしくも苦々しい同棲生活を描く。フォーク歌謡『神田川』みたいな世界観といえばわかりよいだろうか。
僕はたまにこの時代こういう貧困の有様が、あるいはフォークの世界観が、今の時代と近いような気がすることがある。フォークはヒッピーに代表される反戦の影を深く背負っている。アメリカにおけるベトナム戦争の憂鬱が、日本にまで波及し、当時の若者は環境問題など悪化する社会情勢と自分の身の上を自ら憐れんでいた。
それから半世紀、格差と貧困は時代のキーワードになった、忍び寄るテロにみなが憂鬱を抱えている。
2つの時代にどれほど共通点があるかはわからないが、本作が昔の話と片付けるにはもったいないほど心に響く作品であることは間違いない。
主人公の恋人が憂鬱を抱えている場面。平面的だが暗くて切実だ。
最も有名なコマ。「明日がくれば悲しいことは忘れられる」に続くセリフ。
イラスト
小梅ちゃんを始めとする女性画が有名。色白で華奢で若干レトロ。