『オートバイ少女』鈴木翁二 正月には必ず読みます。哀しき若者のモノローグ。
『オートバイ少女』作者鈴木翁二 掲載誌『ガロ』『宝島』など 1973年〜
鈴木翁二という作家
雑誌『ガロ』の代表作家として、つげ義春や林静一と並んで人気だったらしい。
ということくらいしか知らない。とはいえ、作品の質として語るならばやはりこの2人と同じように私小説のような濃密なモノローグ作品ということが言えるだろう。
全編に渡るポエムモノローグ
先の2人に比べるならば、彼はもっとモノローグ的でさらに詩的である。
この短編集の内容は、そのほとんどが本人と思われる貧乏な漫画家と、その友達がグダグダしているだけなのだが奇妙なことに、会話がかなり少ない。また、会話があっても普通の会話として成立していない場合が多い。
では、何がこの漫画にあるかというと絶え間ない詩的なモノローグである。もう本当に延々とモノローグだけが続き、しかもそこに明確なストーリーはない。
成立しない会話
それは何が面白いのだ?という反論がすぐ様返ってきそうだが、なぜか面白い。
彼の描く独り言はなぜか劇的で何度も読み返したくなる魅力がある。是非、ものすごくだめな若者に読んでほしい。
なぜ正月に読むのか。
収録されている『哀愁生活入門』は正月の話。
貧乏な漫画家が正月に苦悶し呻く様を、毎年読んでは感動してしまう。
是非、正月を寂しく過ごされる方には読んでほしい。