誰も話さない本当の『ONE PIECE』第2回「縦のつながり」と大秘宝の正体
前回の考察で分かった「遺産」を受け継ぐというテーマをさらに掘り下げていきたい。そして後述するが、これによりひとつなぎの大秘宝ワンピースの正体も、確たる根拠を持って予想することができる。
「横のつながり」ではなく「縦のつながり」
「遺産」を受け継ぐというテーマが物語のあらすじでも、個々のエピソードでも繰り返し描かれていることがわかった。
これによってもう一つ大事なことがわかってくる。
それは死んでしまった人や偉人もしくは先輩が、子供や後輩に「遺産」を残すというこの構造、言い換えるなら「縦のつながり」が本作にとって重要だということだ。
そう、世間一般に流布されるワンピースの面白いところは「仲間」を大切にするという、いうなれば「横のつながり」という言説は間違いではないが少しずれている。漫画『ONEPIECE』においてもっとも感動的で大事なのは、「遺産」を受け取るという「縦のつながり」という関係なのである。
ひとつなぎの大秘宝ワンピースとは何か。
この「縦のつながり」の重要性に気がつくと、ひとつなぎの大秘宝ワンピースの正体についても確信を持って答えることができる。
それを明らかにする前に、この大秘宝とポーネグリフ(作中での別名歴史の本文)との関係をおさらいしておきたい。
ポーネグリフは前回少し触れたが、麦わら一味であるロビンだけが読める「空白の歴史」を示した文書である。それは劣化しないし破壊できない特殊な石に彫られ、世界各地に散らばっているとされる。
しかしながら、ロビンはこれが読めるために、世界政府に常に狙われているのだが、この古代文書は古代文明の兵器の手がかりになると同時に、「空白の歴史」は世界政府とってとても不都合なものであるらしいからだ。
ロビンの過去よりオハラの研究者クローバー博士のセリフ
作中における歴史には注目しなくてはならない、言わずもがな歴史とは先人の残した「遺産」であるからである。それを考えてみれば「空白の歴史」は物語の根幹に関わる大きな問題であることが分かる。
また、ポーネグリフに関しては空島編でこういう描写もあった。
ゴール・D・ロジャーはポーネグリフを操れるらしいということだ。
海賊王ゴール・D・ロジャーは、最近では主人公ルフィとかなり密接に「縦に」関係してきている。ミドルネーム?のDという文字は、ルフィを含む主要な人物に与えられているものであり、彼らは「Dの一族」と呼ばれることもある。
主人公に関わることからもこれは作中の最も重要な伏線と1つであることは言うまでもないが、「Dの一族」にはもう一つ情報がある。彼らは「神の天敵」とも呼ばれ、ここでいう「神」とは事実上世界を支配する天竜人を指すということが、七武海ドフラミンゴの発言で明らかになった。
少し整理して、以上の情報からわかることは以下のようになる。
・ポーネグリフは、歴史の空白を埋める存在である。
・歴史は過去の人々の「遺産」そのものであり、重要である。
・「空白の歴史」は世界政府にとって、不都合なものであるらしい。
・海賊王とポーネグリフには密接に関係がある。
・海賊王やルフィを含む「Dの一族」は世界政府を始めとする天竜人と、伝統的に対立している。これはポーネグリフと共通する特徴である。
以上の情報とこれまで考えてきた「縦のつながり」を合わせて考えると、
ひとつなぎの大秘宝ワンピースとは、天竜人や世界政府がひた隠しにした「空白の歴史」であり、古代文明と現代人を「縦にひとつなぎ」にする海賊王の「遺産」だと予想することができる。
なぜ「縦に」ひとつなぎ というところが肝だが、これでなぜ「ひとつなぎの」大秘宝なのかというところもはっきり説明することができる。
物語の最大の謎にカタがついたところで、次回は作品内容から少し離れて、『ONE PIECE』と社会との共通点について聞いてもらいたい。自己啓発本がこういうことをいつもやっているが、毎回全く的を得ていないので、ちゃんと考える必要がある。