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HONKY TONK 脳内

主に漫画についての評論 好きな漫画はジョジョ・萩尾望都・楳図かずおと答えるようにしてます。 映画についてはTwitterで https://twitter.com/hoorudenka

『魔法騎士レイアース』すべての境界は消えていく。とりあえず男子の少女漫画に対する何かは消えた。★★★★

魔法騎士レイアース』全3巻『魔法騎士レイアース2』全3巻 作者CLAMP 掲載誌なかよし1993〜96年

 

CLAMP について

彼女たちほど日本があまり見せたくないサブカルチャーに影響を与えた存在はいないかもしれない。これは例えばロリータファッション、ペドフィリアLGBTをネタにすることなどを指す。しかしながら、CLAMPの人気と実力を否定する人もいないだろう。

改めて紹介すると、いがらし寒月大川七瀬猫井椿、もこなからなる創作集団。代表作に『カードキャプターさくら』『ちょびっツ』『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』『×××HOLiC』などがあり、同人活動から活動をスタート、月刊誌ウィングスで掲載された『聖伝-RG VEDA-』で1989年に商業誌デビュー、本作『レイアース』などでヒットを重ね、現在はヤングマガジン、マガジンなどで連載を続ける。

最近で一番話題となったのはカードキャプターさくら』の再始動だが、キャリアの中ではむしろ少女漫画での活動の方が珍しいと言える。

 

みんな隠れて見ていたアニメ『レイアース』と『C.C.さくら』の思い出

僕の世代だとアニメでこの2作を見てCLAMPを知ったというのがほとんどだと思う。

この時僕は小学生だったので、本作『レイアース』の話の筋など理解もせずに、とりあえず剣とか魔神(巨大ロボ)をかっこいいなーと思っていただけだった。そして、おぼろげにこういうジャンルなのになんでおねえちゃん(小学生目線なので)が主役なんやろっとも思っていた、鼻をたらしながら。

今見てもちょっとかっこええやんけ

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そして、鼻をたらしながら見てた割に、「とまーらーない・・・」と流れればとりあえず全部歌えることに、驚愕したのはつい最近。

一方、もう少しあとになって放送された『C.C.さくら』はNHKで堂々と放送されており、姉と一緒になって、表面上やれやれしょうがないなという体を装いつつ、夕食の箸が完全停止するほど熱中して見ていたことを思い出す。これと同時に牛乳をこぼして怒られたことも思い出す。そんなに怒ることないじゃん・・・と当時の少年の心情。

これは僕に限ったことでなく、クロウカードで発動する多数の能力や雪兎さんの変身など男子がときめく要素が多く、あと単純にさくらちゃんがかわいかっただけという説もあるが(僕は知世ちゃん派)、当時の少年は誰も口にはださなかったが隠れて確実に見ていたと断言できる。完全に見た目はフリフリの衣装が目立つ少女漫画的なものだったにもかかわらずだ。

というわけで、ある世代の男女関係なく深層心理にぶっすりと入り込んでいるCLAMPは、しかしながら、ご存知の通りに平穏な作家ではない。

レイアース』あらすじ

本題『レイアース』は漫画だと、途中で『レイアース2』と改名されているものの、実質全6巻となっている。読み返すには最適なボリュームだし、無駄がない構成で大変助かる。これをおそらく少年漫画誌でやったら、30巻くらいにされてしまうことだろう。

余談だが、少女漫画において巻数が少ないことはおそらく、女の子の趣味が年齢によって急激に変化するからだと考えられる。漫画を読んでいた少女はあっという間にファッション誌を読む女性に変わっていき、瞬く間に読者層は入れ替わる。そんな中で何十年も同じ作品を連載することは無意味だ。新規の読者に合わせて、新連載をどんどんスタートさせていくことが肝要になるといえるだろう。

そして、こう考えると男子は何十年も変化なく同じものを読んでいるということで、その内容とは裏腹に、冒険のない奴らということがわかる。

話を戻して『レイアース』は、いわゆる今流行りの異世界召喚系作品といえるだろう。特に知り合いでもない3人の女子中学生獅堂光、龍咲海、鳳凰寺風は東京タワーでの偶然の邂逅の瞬間に、RPG的ファンタジーワールド「セフィーロ」へと召喚される。

 主人公3人。初登場時は初対面だったことを初めて知る。

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剣と魔法のファンタジーはこの作品のベース

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そして3人はほどなくして出会う導師クレフから、自分たちがもとの世界に帰るために、この世界で果たすべき使命があることを告げられる。それは伝説の「マジックナイト」として、神官ザガートに囚われたエメロード姫を解放し、この世界を救うことだった。

電子書籍で見ると見開きがすごく見やすい。そしてCLAMPのデザインセンスはやっぱりすごい。

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境界が消えていくということ。

CLAMPの作品を全部読んだわけではないので、完全に憶測と言わざるを得ないのだけども、本作や『C.C.さくら』によって少女漫画的なアニメに男子が参入してしまったように彼女たちのテーマは「境界を消す」と言えるかもしれない。

少しだけになるが思いついた具体的な例をあげていきたい。

恋愛における境界のなさ

もともとBL的な同人活動ではじまっていることから、恋愛関係の自由さはかなり大胆と言える。本作で言えば2の方で登場するランティス・ イーグルのホモセクシャルな関係を挙げることができるが、この傾向はむしろ「C.C.さくら」で顕著だろう。

さくらの兄桃矢と雪兎に見られるゲイ的な関係、さくらの小学校で担任の先生と付き合っている利佳(アニメ版だとあこがれているというソフトな感じに改変)とこれまた小学生エリオルくんと付き合っている教師観月歌帆におけるペドフィリア、知世ちゃんがさくらに寄せる熱烈な応援にみるレズ的な関係など、かなり幅広くそして大胆に恋愛関係における壁がない。

二重人格的なキャラ

CLAMP作品において、二重人格的なキャラが多いこともこの「境界のなさ」を象徴している。本作においては、一見冷酷な神官ザガートは実は姫を愛する優しい人物だったし、エメロード姫は世界の平安を自分を犠牲にしてまで願う少女であったが、ある葛藤によりその性格は反転してしまう。

『C.C.さくら』においては、優しすぎる雪兎さんは冷酷なユエに、かわいいケロちゃんは強面なケルベロスに変身する。

少ない例だがこのような性質を持ったキャラが多いことは、人格の境界がないとも言い換えることができる。

様々な次元における異世界との境界のなさ

作品の中で、そして作品間で、さらにはメタフィクション的な意味で異世界との交流はやすやすと行われる。そういった意味でCLAMPにとって異世界との壁はそうとうに薄い。

レイアース』の場合、まずは現実世界とファンタジーワールド「セフィーロ」との壁は物語最終部ではなくなってしまう。そして、第2部になると「セフィーロ」以外のいわゆる「他国」が登場し「セフィーロ」に侵攻してくるのだが、この他国との境界は最終的になくなる。つまりは平和な世界が訪れるのである。

また、作品間で世界観がリンクしているものもある。いわゆるクロスオーバーと言えるが『ツバサ』では桜と小狼が登場、さらに別雑誌で連載される×××HOLiC』と世界がつながっている。ここでも異世界との境界がなくなっているのである。

そして、特筆すべきはモコナであろう。

このキャラクターは作者の1人の名を冠し様々な作品に登場するだけでなく、本作でも作品における作者を象徴する大きな役割を担っている。*1このキャラクターはいわば、作者が作品に参入することで、我々の世界と作品との境界を壊していると言える。

以上のことからあらゆるレベルでCLAMPは異世界との境界を消去していっていると考えることができるだろう。

 

境界の消去と同人活動

とはいえ、もともと同人活動からスタートした彼女たちにとってこのことは至極当然なことなのかもしれない。様々なキャラをコラボレーションさせることは、同人というジャンルでは当たり前のことだろうし、そもそも二次創作とは自分が作品に参入していこうという、ある意味では作品と自分を隔てる壁を取り払っていく作業とも言える。

自分が好きな作品を自分で描くことは、それ自体自分を作品世界に入れ込んでいこうとすることだ。これは自分をモデルとしたキャラを登場させるという直接的なものでなくとも、自分の想像力や技術を使いなんらかの形で作品に自分を反映させたいという欲望の表れと言えるかもしれない。そしてそれは、言うなればそれは作品と自分たちの住む世界との境界を消去する活動なのである。

そう考えれば、同人活動からスタートしたCLAMPはこのような「境界」を消し去るという欲望をとてもうまく昇華させていると言えるし、ともすれば、モコナというキャラは作者自身と自ら創作した世界との壁を取り払ってしまいたいという、もっと原初的な欲望から生まれた存在なのかもしれない。そういった意味でやはりCLAMPはすごい作家たちなのである。

かっこいいぞCLAMP

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魔法騎士レイアース(1) (なかよしコミックス)

魔法騎士レイアース(1) (なかよしコミックス)

 

 

*1:ネタバレになるので遠回しな表現になっております。