感想『窮鼠はチーズの夢を見る』おそるべき男(ゲイ)VS 女の戦い。★★★★
『窮鼠はチーズの夢を見る』水城せとな 小学館 掲載誌『Judy』『NIGHTY Judy』
BLの傑作‥だと思う。
BL作品です。このジャンルはほとんど読まないのでどれが傑作だとかは実は知りませんが、それでも読んだ中ではダントツで面白かったです。
水城せとなはドラマ化もされた『失恋ショコラティエ』で大ヒットした人です。僕もこの作品が好きで調べてみたら、もともとBL作家ということでじゃあ読んでみようという。『失恋ショコラティエ』が非常に繊細かつドラマティックな心理描写で素晴らしいなぁと思っておりましたが、本作『窮鼠はチーズの夢を見る』はこれ一冊でその魅力がほぼ楽しめるといって過言でないかと。
あらすじ
会社員大伴恭一は、ある日大学時代の後輩今ヶ瀬渉と再会する。しかし、今ヶ瀬は興信所に勤めており、聞けば奥さんからの依頼で恭一の浮気調査を進めていたという。そして今回めでたくその複数回の浮気のネタがつかめたのだが、ある条件と引き換えに奥さんにこのことを報告しないこともできるという。それは「貴方の体をもらうこと」。
「お前ゲイだったのかよ」と驚きつつも結婚生活のために体を許す恭一。こうして浮気はばれなかったものの、浮気を繰り返す原因であるその優柔不断さから離婚。そして、そこにつけいる今ヶ瀬に徐々に籠絡されていくが、その間様々な女性から言い寄られ…。
ゲイVS女
一般的にはゲイと女性というのは仲がいいというのが定説かと思われます。テレビでもいわゆるオネエキャラはその絶妙な立場から、ともすると女の敵になりがちな女子アナ
にもずばずばものをいいますが、愛情を感じさせるものだし、やはり全般的には女の味方であります。しかしながら、実はそのほとんどが夜の商売出身なので男を立てるのも一級という、たくましい方たちなのですが、この作品の場合事情が違います。
女性とゲイがなぜ同じ男を恋愛対象にしながらぶつからないか、答えは簡単、ゲイはゲイの男を狙うし、女性は大多数のノンケを狙うというはっきりとした住み分けができているからです。しかし、この作品では優柔不断でゲイになりかけの男を狙うことから両者が真っ向からぶつかります。
とこう書いてしまうと、ずっとぶつかっているようですが、そんな昼ドラみたいなわざとらしい芝居は水城せとなは書きません。直接ぶつかるのは作中一度ですが、そこでの会話がとても素晴らしくて、しびれる!一語一句同じではないですが、ちょっとだけ書きます。
女「私は恭一があなたのようなドブにはまっていくのを、見過ごせない。」
今ヶ瀬「僕はドブですか?」
女「そうよ、ドブよ。」
こえぇ。