感想『女帝』kindleセールだったから読んだ、今は感謝の気持ちしかない。★★★★
『女帝』全24巻 画 和気一作 原作 倉科遼 掲載誌漫画TIMES 掲載年1996年〜2001年
倉科遼という作家 ネオン漫画の元祖
倉科遼といえば、ネオン漫画の元祖、いわゆるホストとかホステスとかの漫画、66歳の大ベテランと知ったのはこれを読んでから。よく名前は見るなとは思っていましたヤンジャンでやってた『夜王』とか。
ですが、一番思ってたのはお父さんが読むちょっとスケベで変な漫画
なので『女帝』もアマゾンセールで100円だったから読んだんですが、なめてましたすみません。おもしろかったです。
あらすじ。私は夜の世界で女帝になる!
熊本でスナックを経営する母と暮らす高校生立花彩香。美人で頭もいい彼女は、みんなのあこがれで、地元企業のおぼっちゃま杉野謙一もその一人であった。しかし、そんな彩香に猛烈なライバル心を燃やす政治家の娘梨奈は、ある事件をきっかけに彩香を陥れる。そしてそれと同時に杉野の父親は、彩香の母にスナックの立ち退きを迫り、そのストレスから彼女は病死してしまう。
そして彼女は自分たち親子を苦しめた謙一と梨奈をはじめとする「上流の」人間に復讐することを誓った。そして、それを実行するために自分ともっとも近い夜の世界での「女帝」を目指すのだった。
顔面崩壊も気にせず、啖呵をきる彩香。これで高校生。
「女帝」への道。しかし、「女帝」とはなにか。
こうして女帝への道を歩んでいく彩香ですが、実は具体的な女帝像は持っておりません。前述の人たちへの復讐を目的とはしますが、どういう人間がそれに当たるのかわかっていないので、あれこれ悩みながらホステスをやっていくんです。
でも、なんとなくわかると思うんですが、いわゆるやくざとか政界の実力者と仲良くなって世の中をコントロールするという、確かにそれもあります。
客のスキャンダルを握りつぶすためにやくざを使い、しかもすっとぼけるあたり既に悪役に見える。
しかし、本作はそれだけではなく、自分が雇っているホステスの将来はどうするか、ひいては銀座の街をどうしていくかというというところにまで言及していきます。
ホステスがパアッと行くときはゲイバーにいくのか。
この問題にどう決着をつけるか、彩香がどんな「女帝」になるかは読んでご確認ください。24巻とちょっと長いですが、各話平均4ページくらいは彩香のシャワーシーンとなっておりますのでご安心ください。
変なところ。
最初にちょっとスケベで変な漫画と思っていたとありましたが、今はちょっと反省しています。しかし、変な漫画というところは間違っていなかったと思っています。
しかしそれも含めておもしろいのでちょっと紹介します。
泥棒猫!!
ホステスの世界の話なので寝とった、寝取られたの話は結構出てくるのですが、掲載年から考えても「泥棒猫」はちょっと古い。でもまぁ許せる。
夫婦喧嘩。
彩香の同級生杉野と梨奈はけっこう序盤で結婚します。いわゆる政略結婚なので、この夫婦の仲は浮気などもあって徐々に冷たいものになっていくんですけども、久々に妻が誘う時の一場面。
色情狂(ニンフォマニア)か!!と激しいつっこみ。
なんで口調がツッコミ調なのかとか、そんな罵倒はじめて聞いたわということもありますが、それにつられて妻が不能野郎!!に対してインポとルビをふっているとこがぐっときますね。
死ねやぁっ!!
本作のみどころといえばベットシーン、大人の漫画なので、やっぱりあります。
そんなに過激ではないですが画は載せられないので、セリフだけご紹介します。
「アアッ イイッ アアッ スゴイ!! アアッダメ イクウ…!! アアッ!イクウ!!
イヤア…ダメエ……イクウ!!アアッスゴイ スゴイッ
許して ダメエ!! アアッ イイッ!!イイイッ
イメチェンの失敗
作中10年弱くらい経過するので、主人公を含め登場人物の見た目が変わっていきます。
ですが、たまにこの「イメチェン」に失敗する人が出てきます。
以下は彩香のホステスでのライバル、薫です。
まぁちょっと眉毛太すぎて変だけどまぁいいかって感じですが、時が経つと…
なんだそのものすごいモミアゲは。
次に彩香にとっての重要な人物となるヤクザ伊達直人。
なんでタイガーマスクと同姓同名なのかは作中誰も気にしませんが、そんな彼もイメチェンに失敗してしまいます。
登場時の伊達直人。いかにもやくざという出で立ち。
ですが数年経つと
リアル桃白白になってしまいました。
彼もそれに気づいたのでしょう。この後、緩やかに最初に近いビジュアルに戻っていきます。
妊娠に対する見方。
ネタバレ気味になっちゃうんですけど、彩香が子どもを作ろうか迷うみたいな話が出てきます。そこから見えてくる作者の妊娠に対する見方がおかしい。
まず、その問題の話につながる前話のラストページをみてください。
普通の会話ですが、問題は次の話のタイトル。
受胎計画
びっくりするわぁー間違ってエヴァ開いちゃったかと思ったわぁー。
今ちょっと問題になってる妊活もこう呼んだ方が深刻さが伝わると思います。
終わりに
この年代の作家は、劇画のシリアスな中にナチュラルかつ高等なユーモアをはさんできますよね。それを見つけた『クロマティ高校』を超えるほどに。
親父もこうやってつっこみながら読んでいたのだろうか。